富士山の100分の1の大きさをした塔
そのてっぺんで、杖をついたおばあさんと会った
娘さんと2人でやってきたという
私は杖をついた父と一緒にやっと登った
シャッターを押してくださいと頼んだ
空は青いが雲が深くて
深い雲の辺りを背景に父と並んだ
私もシャッターを押した
杖のおばあさんが突然ピースをして
いい写真が撮れた
葡萄の季節が終わったから
富士の向こうがわから来たと言った
海はいいねと言っていた
並んだ写真の後ろの雲の向こう側
本当は富士山ではなかった
後ろのあまりに大きな雲の向こうが富士だったとあとで気づく
大人が4人に杖2本
あちらには、おじいさんがおらず、
こちらにはおばあさんがいなかった
親子で富士を観にきて、富士は隠れたままだった
雄大な富士が見えていたなら
シャッター押してくださいと
頼む余裕はなかったかもしれない
心も雲に隠れた富士のようだ
雲の向こうにたしかにあるのだろうが
大きいゆえに雲が隠してしまう